高血圧に対する効果的な食事療法は?

みなさんこんにちは、ヴィデビムスクリニックの宮﨑です。

米国管理栄養士として、食生活を通じて会員の皆様の健康維持のお手伝いをさせていただいています。

今回は、高血圧に対する科学的根拠のある食事療法として、多くの患者さんが食生活に取り入れているDASH食について紹介させて頂きます。

 

DASH食とは?

DASH食は、Dietary Approaches to Stop Hypertensionの頭文字が名前の由来となっています。アメリカでは1990年代から研究が始まりました。様々な臨床試験で効果が実証されていることから、アメリカ国立衛生研究所(NIH)も推奨しており、米国では高血圧患者へ広く指導される食事内容となっています。

 

DASH食の特徴は、塩分の制限に加え、野菜など他の食事グループの摂取についても細かく推奨している点です。詳細は以下をご確認ください。

 

<DASH食の食事パターン(各食事グループの1日当たりサービング数)1

食事グループ 1,600カロリー/日 2,600カロリー/日 3,100カロリー/日
穀物(ほぼ全てのServingsで全粒製品推奨) 6 10-11 12-13
野菜 3-4 5-6 6
フルーツ 4 5-6 6
低脂質/無脂質牛乳、乳製品 2-3 3 3-4
脂質の少ない肉、鶏肉、魚 3-6 6 6-9
ナッツ、種類、豆果類 3 / 週 1 1
脂質・オイル 2 3 4
スイーツ、砂糖を加えること 0 <2 <2

 

またDASH食の栄養素の特徴は、飽和脂肪酸とコレステロールが少なく、カリウム、カルシウム、マグネシウム、食物繊維が多い点となります。

 

<DASH食における各栄養素摂取目標

総脂質量 総カロリーの27% ナトリウム 2,300 mg(塩分換算5.75 g)*
飽和脂肪酸 総カロリーの6% カリウム 4,700 mg
たんぱく質 総カロリーの18% カルシウム 1,250 mg
炭水化物 総カロリーの55% マグネシウム 500 mg
コレステロール 150 mg 食物繊維 30 g

*ただし、ナトリウム量を1,500 mg (塩分換算2.5 g)/日を目標とすると、血圧がさらに下がることが確認されています。

 

 

DASH食の科学的なエビデンス

DASH食については様々な研究が行われていますが、ここでは、DASH食が広く認知されるきっかけとなった2つの研究を紹介させて頂きます。

 

1つ目の研究は1999年に発表された論文2で、459名の高血圧患者(<160 mm Hg / 80-95 mm Hg)をDASH食、野菜とフルーツが豊富な食事、コントロール食(アメリカの一般的な食事)の3群に割付け、各食事を8週間継続した試験です。当時から減塩が高血圧にポジティブな影響を与えることはわかっていたので、3群ともナトリウムは約3,000 mg / 日と統一されていました。その結果、DASH食と野菜とフルーツが豊富な食事は、コントロール食と比べ強い降圧作用を見せました。中でもDASH食の降圧作用は、野菜とフルーツが豊富な食事と比べても強く、食事開始後2週間から降圧作用が確認されました。

 

2つ目の研究は2001年に発表された論文3で、高血圧患者を、DASH食とコントロール食群に分け、さらに各群において1日のナトリウム摂取レベルを3,300 mg、2,300 mg、1,500 mgの3つのグループに割付けて、各食事を30日間継続した試験です。その結果、DASH食、コントロール食ともに、ナトリウム摂取量が低いほど、降圧作用が強いことが確認されました。また各ナトリウム摂取量で、DASH食とコントロール食を比べた場合、いずれのナトリウム摂取量においてもDASH食がコントロール食と比べ降圧作用が強かったことが示されました。

 

 

日本におけるDASH食は?

日本におけるDASH食については、いくつかの研究が行われているもののまだ十分には検証されていないと言われています。4

 

では、日本においてDASH食を実施する場合、どのような情報が参考になるのでしょうか?日本高血圧学会は、農林水産省が発行している食事バランスガイド(以下の図)5が参考になると述べています。4特に食事バランスガイドにある調理例は、献立を考えるうえで参考になると思います。

 

農林水産省ホームページ (http://www.maff.go.jp/j/balance_guide/kakudaizu.html)から引用。

 

その際、主食は、白米・食パンではなく、玄米・全粒パンなどの全粒製品を摂取すること、ナトリウム量を2,300 mg(塩分換算5.75 g)に抑えることに注意しましょう。

 

 

以上、DASH食について紹介させていただきました。高血圧に対するDASH食は、数ある食事療法の中でも非常にエビデンスレベルが高いとされる食事療法です。

 

高血圧に悩まれている方は、ご自身の食事を考える際に、ぜひご参考にして頂けましたら幸いです。

 

 

出典

  1. S. DEPARTMENT OF HEALTH AND HUMAN SERVICES, National Institutes of Health, National Heart, Lung, and Blood Institute. YOUR GUIDE TO Lowering Your Blood Pressure With DASH. 2006 Apr.
  2. Svetkey LP, Simons-Morton D, et al. Effects of dietary patterns on blood pressure: subgroup analysis of the Dietary Approaches to Stop Hypertension (DASH) randomized clinical trial. Arch Intern Med. 1999 Feb 8;159(3):285-93.
  3. Sacks FM, Svetkey LP, et al. Effects on blood pressure of reduced dietary sodium and the Dietary Approaches to Stop Hypertension (DASH) diet. DASH-Sodium Collaborative Research Group. N Engl J Med. 2001 Jan 4;344(1):3-10.
  4. 日本高血圧学会(2014)『高血圧治療ガイドライン2014』
  5. 農林水産省ホームページ http://www.maff.go.jp/j/balance_guide/kakudaizu.html

 

 

プロフィール

宮﨑拓郎

2007年早稲田大学人間科学研究科修了後、約9年間製薬企業にて新薬の海外展開・事業開発等を経験した後渡米。2018年ミシガン大学公衆衛生学修士(栄養科学専攻)修了後、ミシガン大学病院、アナーバー軍人病院等での管理栄養士研修勤務を経て米国管理栄養士資格取得。在学時より同大学消化器内科臨床試験コーディネーターとして食事療法に関する研究にも従事。2019年よりヴィデビムスクリニックに勤務。